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 As/Rの特徴って悩んでみた


 Ver.2.0の正式版リリース準備が終わりました。
 なんか、一段落が付いたところで現在の「立ち位置」の再確認を含めて、いろいろ考え込んでしまいました。
 というわけで、最近聞かれて困った質問を取り上げてみようと思います。

Q.As/Rって、他のファイラーと比べてどういう特徴があるん?
A.知らんがな

 こんなやり取りがありました。

 普通、よそ様の同一ジャンルのソフトは比較どころかインストールすらしないでしょ。
 だって、他のソフトの使い方を覚えるより自分で作ったほうが楽しいんだから。(え

 とはいえ今回は、特に高速性を重視して作っただけに、表示性能が高い事は特徴の一つです。
 エクスプローラーとの比較は、ヘルプの方に詳しく書いているので割愛しますが、他所のファイラーの状況なんぞ、想像もできませんよ。
 というわけで、ライバルさん達をピックアップしてベンチマークとって見ました。



 計測に使ったソフトは普段のAs/Rのチューニングに使ってるもので、特定のプロセスのCPU使用率を判定し、3%以上の平均使用率の連続した時間を加算して集計します。
 時間の積み上げは、負荷監視の最低単位である55ms刻み(計測環境での最低単位)になっております。

【テストの条件 】
・何回かアクセスし、ディスクキャッシュが有効に働いていおりHDD性能が影響を与えない状態
・30万ファイルを1つのフォルダに格納し、表示させた時間
・全半角混在、ファイル名は20〜80文字の不定長
・CPUコアは4個/4HTの合計8コア
・Window7、クリーンインストール直後の状態、セキュリティソフトの類は入れておりません
・基本的に一覧/詳細/アイコン表示を取り上げます。縮小版はソフトの性格も影響するので除外します
・対象はx64ネイティブ対応と明記されているもの限定
・起動しているのは死活監視のためのタスクマネージャだけ
・基本的にインストール直後の初期設定状態
・ソート順は性能差があまり出ないであろう名前順に類するもの
・数値の単位は全てミリ秒(ms)
・負荷が瞬間的に下がるものは、操作を受け付けるようになるまでの合算値
・測定をした日に入手できた最新版を使用
 古い版で測定してしまった場合は申し訳ありません。
・シェアウェアは全部試用期間中に行ったものです。何らかの機能制限がかかっていたら申し訳ありません。

【超重要な注意書き】
自分の得意なところだけを取り上げた、かなり卑怯な切り口の調査です。
性能評価なんぞバージョンが1個上がって、劇的に改善されることもあります。
こんな更新されることもなさげな、一方的な評価を鵜呑みにしないでください。

無許可で書いてます。
苦情来たり、削除要請があったり、補足/訂正/間違いがありましたら対応いたします。



エクスプローラー風の部門(速いモードが多い順)

As/R Ver.2.0.0

 アイテム数によって、さらに表示が速くなる安全装置が働くのが初期値だが、それらは全て無効。
 マルチコア対応、表示中の中断も可能で、応答性は良い。
 並び順の機能名:文字コード順
詳細2,200
一覧2,200
アイコン2,255


Q-Dir Version 5.14 x64

 海外のもの。日本語対応。
 とても4画面にこだわっているファイラー。マルチコア対応。
 表示中の中断も可能で、応答性は良い。
 並び順の機能名:名前
詳細7,920
一覧8,030
アイコン9,790


Tablacus Explorer 12.4.8 x64

 X-Finderの作者さんのリメイク作品。
 全作り直し・・・他人事に思えないですが、きっといろんな葛藤があったんでしょう。苦労がしのばれます。
 並び順の機能名:名前順
詳細9,900
一覧8,305
アイコン8,305


まめFile5 Second Edition Ver.6.51

 これやらんと嘘っぽいでしょ・・・というわけで、忘れたい過去です。
 並び順の機能名:名前順
詳細8,030
一覧(幅固定)6,875
一覧14,245
アイコン137,335


DirectoryOpus 10 x64

 海外もの。日本語対応。
 かなりの多機能タイプ。
 本体exeサイズが、飛びぬけて大きい。
 平均サイズの10倍というのはさすがに疑問を感じますが、画像や音声などのファイルが本体に含められているのかもしれません。
 並び順の機能名:ファイル名
詳細12,760
一覧17,545
アイコン12,265


xplorer2 2.1.0.2 ULT [Unicode] x64

 海外のもの。日本語対応。
 2画面を重視する多機能タイプ。
 この作者さんは、以前シェルインターフェイスの入門記事を書かれていて私も勉強させてもらいました。
 詳細表示の速さはさすがの一言。
 並び順の機能名:名前
詳細1,870
一覧147,400
アイコン134,035


秀丸 Explore clasic Ver.1.01 x64版

 表示は速いがカーソルが砂時計になって操作できない、エクスプローラと同じように速く見える錯覚を利用するタイプ。
 そのためスコアのわりにかなり速く感じます。
 表示中の中断も可能で、応答性は良い。
 並び順の機能名:名前順
詳細33,770
一覧149,270
アイコン15分経過したため中断


FileVisor7 Ver.7.32

 こちらも老舗、このジャンルでの大先輩でもあり、統合アーカイバ関係でも先輩。
 何かと比較される事が多かったが故に、ずっと意識させられてきた感がずっとありました。
 多分、一生追いつけないと思います。
 群を抜いてデザインかっこいいです。
 並び順の機能名:名前でソート
詳細77,110
一覧149,270
アイコン15分経過したため中断


Explorer++ - Version 1.3.4

 海外のもの。
 エクスプローラ風のUIと機能のため、親しみやすそうな印象を受けました。
 詳細表示はエクスプローラと同じように速く見える錯覚を利用するタイプです。
 並び順の機能名:Name
詳細108,460
一覧152,845
アイコン157,245



テキストファイラー部門

Paper Plane xUI Version 1.25 x64

 別次元の速さがここに・・・すごいな・・・。
 ただ噂どおり、設定が難しいですね(--;
 並び順の機能名:名前順
825
※追記
 Paper Plane xUIは一覧最大数のメモリを確保し続けてメモリを開放しないから速いのだ、という指摘をいただきました。
 上記のバージョンで動作を確認し、事実のようです。
 苦手分野もあると思いますが、用途にマッチするなら有りなアプローチですね。
 (上記のテストで30万ファイルを一度表示させると、30万ファイル分の領域を確保したまま、それを流用して使い続けるっぽいということです)


あふw v.1.55

 唯一、慣れようと練習して挫折したソフトです。
 期せずしてAs/Rと全くの同タイムですか・・・お手柔らかにお願いします。
 並び順の機能名:名前順
2,200


WinFM2008 Ver.2.31

 老舗の雄ですね。
 起動画面を見るだけで、胸が熱くなります。
 並び順の機能名:名前順
6,930



 作り手の観点から見た解説をしておきます。

 As/Rのスコアは、エクスプローラ風のジャンルに限れば
 フフフ、圧倒的ではないか、わが軍は
 と油断しておいて、テキストファイラーとの比較で、さくっと射殺されてます。

 まぁ、まだまだ高速化のネタは、残ってますので
 まだだ!まだ終わらんよ!
 と言いたいところですが、Paper Plane xUIには逆立ちしたって敵いません。
 きっと、連邦のPaper Plane xUIは化け物です。


 というところで、上のベンチマークの見方を解説したいと思います。

 詳細、一覧、アイコン表示で、それぞれ極端に差が出るソフトはリストコントロールを標準的に使用しているものと思われます。
 リストコントロールにアイテム追加、アイテム追加・・・って入れ込むタイプですね。
 また大量のアイテムを扱う事が苦手です。
 その代わり扱いが簡単で、機能の実装に集中できると言えます。


 それに対して、差が出ないタイプは「仮想リスト」という手法を使用しているものと思われます。
 これは、リストコントロールに対して「お前表示するときはこの配列見ろよ」って指示して、表示するときに一生懸命働く形態です。
 配列も描画も、全てを自己管理する必要があるので超めんどくさいですが、数が増えても速度劣化しにくい特徴があります。
 ただカーソル移動などの描画も全部自前なので、このあたりが遅くなるケースが多々あります。
 某エクスプローラーはスムーズスクロールにする事で、この辺りの遅延を隠蔽しちゃってますがね。

 つまり、各ベンチマークのばらつきで、ソフトがターゲットとしているファイル数がどれくらいなのか?機能重視か?性能重視か?が分かるわけです。
 (単にプログラミング上の都合で差が付いているだけかもしれませんので、あくまで推測です)
仮想リストタイプ標準リストタイプ
As/R
Tablacus Explorer
DirectoryOpus
Explorer++
Q-Dir
まめFile5 Second Edition
秀丸 Explore clasic
FileVisor7
xplorer2
 他にも、作者が主として使う表示モードはどれか?という事も分かります。
 例えば、まめFile5 Second Editionは「一覧」ですし、xplorer2は「詳細」がメインですよね。


 次にテキストファイラー系との違いですが、これはファイルの一覧を作るためのAPIが違うのです。
 エクスプローラタイプのものはシェルインターフェイス(IShellFolder)、テキストファイラー系はFindFirstFile()系を使用しています。
 前者は、コントロールパネルとかの仮想アイテムも同じやり方で取得できますが、取得可能な情報量が多い事もあって全体的に遅いです。
 後者は、通常フォルダーは速いんですが、コントロールパネルなどの仮想アイテムを取得する事ができません。
 実装するのであれば、まったく別系統の実装をしなければならないのです。
 つまり作り手が、仮想フォルダーへのアクセスを重視するか否かで分かれてると言えます。



 で、ここから一番重要な結論です。
 おそらく、脊椎反射で何か言われると思いますが、こんなテストは無意味かつ便所の落書きだと私は考えています。
 そして今回の評価を固定しないでください。

 上でも書いていますが、バージョンが変わればこんな記事は速攻で陳腐になります。
 オンラインソフトなんてナマモノは鮮度があるものですし、男子三日会わざれば刮目して見よというわけです。
 例えば、私自身もまめFileが遅い重いって言われて嫌な思いをしてました。
 今回の結果を見れば、そんなに極端に遅いってわけでもないですが、もう二度と評判が覆ることはないでしょう。

 また、現実に即したテストでもありません。
 30万ファイルも存在するフォルダを作ることなど、ほとんどありえないでしょう。
 As/Rは、こういう極端に速度に偏重したエクスプローラ風のタイプであるというだけの話です。

 また今回、あふwと同タイムだったわけですが、それは先方が油断してただけで、AKTさんほどの人なら本気出せば間違いなくぶっちぎられます。
 もしかすると、さほど性能が必要なく意識してないという話もあるかもしれませんし、Dephi側の制限かもしれません。
 一番肝心なのは、それぞれの作者が優先しているものが全く違うという事が、こうして並べてみれば良く分かるのではないかと思います。


 そしてファイラーなんてものは、ソフトの特徴を見極め、自分に合うか合わないかで選ぶべきです。
 例えば「詳細」しか使わないって人なら「xplorer2」が一押しです。
 よりエクスプローラ風なUIを重視する場合でも、どの表示モードを重視するか、応答性を重視するかで「秀丸 Explore clasic」か「Explorer++」が分かれるでしょう。
 もちろん起動の速度やマクロの自由度など、ここで取り上げてない特性や、魅力的な独自機能で差別化されることも当然あるべき姿です。

 そういった見分け方の一助になればという意図で書いたつもりですし、またファイラーというジャンルが盛り上がるといいですねという願いも込みです。